研究概要 |
パーキンソン病等の神経変性疾患に関わる遺伝子としてαシヌクレインやパーキン等が発見され、ユビキチン・プロテアソーム系を介した細胆内蛋白質の分解異常と神経変性疾患との関連性が近年注目されている。これら一連の報告の中で、カテコールアミン生合成系律速酵素であるチロシン水酸化酵素(TH)が、パーキンヅン病の発症・進行において重要な役割を果たしている可能性が指摘されているが、その詳細は不明である。 本研究の目的は、神経細胞死におけるTHの役割を、細胞内におけるTHの安定性の変化、および、その結果として生じるカテコールアミン生合成量の変化から解明することにある。平成18年度の研究において、THのN端配列Met^1-Asp^<22>が本酵素の細胞内安定性に重要な役割を果たしていること、および、この配列中にはプロテアソームの標的となるPESTモチーフ(Proline, Glutamate/Aspartate, Serine and Threonine Motif、 Met^1-Lys^<12>)が存在することを明らかにしている。 しかしながら、平成19年度に行った詳細な実験からは、このPESTモチーフがTHの細胞内安定性に影響を与えている事実を確認することが出来なかった。一方、RNAi法を用いた実験において、脳蛋白質の約8%を占める14-3-3プロテインの中で、14-3-3ηプロテインがTHの細胞内安定性を低下させること、加えて、14-3-3ηプロテインとTHの反応には本酵素のN端配列Met^1-Asp^<22>が重要であることを発見した。すなわち、14-3-3ηプロテインがTHの細胞内安定性に影響を与えることで、カテコールアミン生合成量が制御されている可能性を明らかにした。
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