電位依存性K^+チャンネルの結晶構造解析で、チャンネル開口に伴うコンホメーションの変化が大きい部位と考えられるS4領域周辺に注目し、N型およびP/Q型Ca^<2+>チャンネルα1サブユニット(α1Bおよびα1A)の1分子中に4箇所存在するS4領域の両側にそれぞれmyc-tag epitopeを挿入した。これらのα1Bおよびα1Aサブユニットを、Ca^<2+>チャンネルα2δ1およびβ1サブユニットと共にアフリカツメガエル卵母細胞に発現させ、電気生理学的にチャンネル活性を確認した後にFluo-4 dextran(40μM)を注入し、チャンネルを脱分極刺激した時のCa^<2+>イオンの流入を、全反射蛍光顕微鏡を用いて1分子レベルで観察した。卵母細胞に脱分極刺激を加えたとき、変異α1サブユニットを発現させた卵母細胞では、Fluo-4による蛍光スポットの数が増加し、蛍光スポットの点滅と軌跡のゆらぎが観察できた。一方、蛍光タンパク質GFPをC末に融合させたα1Bを発現させた細胞では、蛍光軌跡の動きが見られた。さらに、myc-tag挿入変異α1をAlexa Fluor 488標識抗myc-tag抗体で標識し、脱分極刺激を加えたとき、GFP融合α1Bと同様の蛍光軌跡の動きに加え、蛍光強度の変化も観察できた。以上により、この蛍光強度の変化は、脱分極に伴う電位依存性Ca^<2+>チャンネルの1分子レベルでの変化を意味し、チャンネル開閉をモニターしている可能性が強く示唆された。従って、本申請研究の最大の課題である、1分子レベルでの電位依存性Ca^<2+>チャンネルの開閉の可視化には、ほぼ到達できた。しかしながら、S4領域周辺のどの場所にmyc-tag epitopeを挿入すべきかの部位決定に思いの外時間を要し、当初計画のチャンネル開閉に対するG蛋白質やリン酸化の影響を明らかにするまでには至らなかったため、引き続き検討していきたい。
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