本年度は、P2Y12を介したラミファイド型ミクログリアの運動能の制御分子機構を解明するために、1:ラミファイド型ミクログリア培養法の確立と2: P2Y12Rの下流で遊走調節に関与するホスホリパーゼC(PLC)シグナル系の解析をおこなった。 研究成果 1:ラット脳の初代混合グリア培養細胞をコラーゲンゲルまたはPuraMatrixペプチドハイドロゲルに封入してドロップカルチャーすることにより、多数に分岐した長い突起を有するラミファイド様のミクログリアとニューロンおよびアストロサイトが共存する培養系を確立した。 2:ミクログリアに発現するPLCアイソフォームをRT-PCRおよびウェスタンブロット法を用いて調べたところ、PLC-β1とβ4の発現は認められず、β2、β3、γ1とγ2の発現が認められた。P2Y12に対する高親和性アゴニストADPの刺激により、β2の膜ラッフル部位への集積が観察されたが、γ1とγ2のリン酸化の亢進は認められず、PLC-βがP2Y12の下流で機能し遊走調節に関与することが示唆された。次に、PLC阻害剤を用いてADPによるミクログリア遊走に対するPLCシグナル系の関与を検討したところ、PLC阻害剤はミクログリアの遊走を阻害するとともに細胞内カルシウムの上昇を抑制し、細胞内Ca^<2+>キレート剤もまた遊走を阻害したことから、PLC-Ca^<2+>シグナル系の活性化が遊走調節に必要であることが明らかになった。また、PLC阻害剤と細胞内Ca^<2+>キレート剤が、Pl3Kに依存したAktの活性化を抑制したことから、Aktの活性化はPLC-Ca^<2+>とPl3Kの両シグナル系により制御されることが示された。さらに、Akt阻害剤はミクログリアの遊走を抑制したことから、Aktがミクログリアの遊走調節に関与することが示唆された。
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