研究概要 |
本年度は、ATPによるミクログリア突起伸長の調節分子機構を解析するために、1)ミクログリアの突起伸長アッセイ系を作成し、P2Y12受容体の下流で機能するホスファチジルイノシトール3キナーゼ(Pl3K)とホスホリパーゼC(PLC)シグナル系の関与を検討した。また、2)P2×4受容体アンタゴニストの影響を調べ、P2×4の関与を検討した。 研究成果 1)ラット脳初代培養ミクログリアをトランスウェルインサート内に作成したコラーゲンゲル上に播種した後、ATP(50μM)をボトムウェルに添加すると、ミクログリアの突起伸長が観察された。突起伸長は、同濃度のATPをインサート内とボトムウェル内に同時に添加した場合には観察されなかった。また、ATPあるいはADP,2MeSADPにより引き起こされるが、UTPとUDPでは起こらず、P2Y12選択的アンタゴニストで抑制された。これらの結果から、突起伸長はATPの濃度勾配に依存したケモタキシスな反応であり、P2Y12を介して引き起こされる事が確認された。そして、Pl3K阻害剤およびPLC阻害剤により抑制されたことから、突起伸長はP2Y12の下流で活性化されるPl3KとPLC両シグナル系により調節されることが明らかになった。さらに、ATP刺激によりミクログリアのコラーゲンゲルに対する接着性が高まることを見出し、P2Y12を介した細胞接着因子の活性化が示唆された。 2)P2×4のアンタゴニストTNP-ATPとP2×4には作用しないP2XアンタゴニストPPADSの突起伸長に対する影響を調べた結果、TNP-ATPに阻害効果が認められ、PPADSには認められなかった。これらの結果から、P2×4が突起伸長に関与する事が示唆された。
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