本研究は、グリア型グルタミン酸トランスポーターのグルタミン酸処理に関する機能的役割を解明することを目的としている。 〔本年度の研究成果〕 (1)マウス小脳のプルキンエ細胞(PC)から、パッチクランプ法により、登上線維(CF)刺激により誘発される興畜性シナプス後電流(EPSC)を記録し、野生型、グリア型グルタミン酸トランスポーター(GLAST、GLT-1)欠損マウスのCF-EPSCのkineticsの変化を比較することにより、グルタミン酸の回収の遅れを検出した。AMPA受容体の脱感作を除去するcyclothiazide(CTZ)存在下ではGLT-1欠損マウスのCF-EPSCの下降相の時間経過は野生型マウスより遅くなった。しかし、その延長の程度はGLAST欠損マウスの延長に比べて軽度であった。また、野生型マウスにおいて、グリア型グルタミン酸トランスポーター選択的阻害剤PMB-TBOAを投与するとCF-EPSCの時間経過は遷延し、PMB-TBOA 10 nMのCF-EPSCはGLT-1欠損マウス、100 nMではGLAST欠損マウスの延長に相当した。この結果は、グリア型グルタミン酸トランスポーターによるグルタミン酸除去に関して、GLT-1はGLASTより軽度であるが機能的役割を果たしていることを示している。 (2)野生型マウスのCF-EPSCに、PMB-TBOA(200nM)を投与すると立ち上がりの遅い余剰なCF-EPSCが記録された。これは、グリア型トランスポーターを阻害することで、ベルクマングリアのグルタミン酸除去機能が低下するとグルタミン酸のspilloverがおこり、刺激を受けたCFが直接シナプス結合していない隣接するPCのシナプス後受容体を活性化することによる現象であり、CF-PC間の機能的1:1結合はグリア型トランスポーターの活動によって保証されることを示している。
|