研究課題
マウス網膜神経節細胞にマルチ電極法を適用し、コンピューターディスプレイの明るさをコンピュータープログラム上で変化させ網膜に光刺激を行うと、網膜神経節細胞から活動電位を記録することができる。このとき記録される光刺激に対する活動電位の発射パターンの解析から、マルチ電極法を用いるとON型とOFF型網膜神経節細胞の光応答を区別することができることがわかった。そこで網膜神経節細胞の光応答がP2型プリン受容体を介する修飾を受けているかどうかを明らかにする目的で、P2型プリン受容体の阻害薬であるPPADSを投与し、光刺激に対する網膜神経節細胞の光応答をON型とOFF型に分けて解析した。光応答の解析からPPADSはON型網膜神経節細胞の光応答を抑制するが、OFF型では光応答を増強することが明らかとなった。またOFF型網膜神経節細胞における光応答の増強は、単位時間当たりの発火頻度の増加ではなく、OFF刺激に対する発火持続時間の延長によることが明らかとなった。以上の結果からマウス網膜神経節細胞の光応答は、P2X受容体を介してON経路とOFF経路で異なる調節を受ける経路特異的な修飾機構を持っていることが明らかとなった。網膜神経節細胞の光応答調節にかかわる受容体のサブタイプについてはPPADSの受容体サブタイプ特異性が低いため、P2X受容体であることまでしか検討できなかった。昨年度まで実施したパッチクランプ法を用いた実験結果とあわせると、網膜神経節細胞で見られる経路特異的な調節機構はP2X2型プリン受容体が一番可能性が高いと思われるが、サブタイプ決定のためにはさらなる薬理学的実験が必要と考えられる。
すべて 2008
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Eur. J. Neurosci. 28
ページ: 128-136