研究概要 |
Duchenne型(DMD)およびBecker型筋ジストロフィー(BMD)の原因遺伝子であるジストロフィン遺伝子は,複雑なゲノム構造をもつ,全長2.5Mbの巨大な遺伝子であり,ジストロフィンタンパク(Dp427m)だけでなく多数のアイソフォーム(Dp427c,Dp427p,Dp260,Dp140,Dp116,Dp71)を産生する。DMDおよびBMDは,ジストロフィン遺伝子の様々な領域における欠失,重複,点突然変異により発症することから,ジストロフィンアイソフォームの機能を知ることは筋ジストロフィーの病態を理解する上でも重要であると考えられるにもかかわらず,ほとんど不明なまま残されている。本年度は,最も分子量の小さいジストロフィンアイソフォームであるDp71の機能を,我々の研究室で作成したDMD-nullマウス(Cre-loxPシステムを用いてジストロフィン遺伝子座を完全に除去したモデルマウス)を用いて解析した。鋤鼻神経は,鋤鼻器から副嗅球にフェロモンによる刺激を伝達すると考えられている神経細胞であり,Olfacoty ensheathing cellにより神経線維が束ねらながら副嗅球に投射する。DMD-nullマウスでは,鋤鼻神経の投射は概ね正常であるが,繊維束形成に異常が生じていることが判明し,また,Olfacoty ensheathing cellの細胞膜近傍でDp71が発現していることから,鋤鼻神経の束状化にDp71が関与しているという興味深い知見が得られた(現在投稿中)
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