研究課題/領域番号 |
18500321
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
福田 紀男 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (30301534)
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研究分担者 |
栗原 敏 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (90057026)
大槻 磐男 東京慈恵会医科大学, 医学部, 客員教授 (70009992)
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キーワード | 心筋 / 筋長効果 / Frank-Starling機構 / タイチン / 静止張力 / 格子間隔 / トロポニン |
研究概要 |
本研究課題の目的は、心筋の筋長効果、すなわちFrank-Starling機構の分子メカニズムを、収縮タンパク系レベルで解き明かすことである。既に我々は、巨大弾性タンパク質タイチン依存性の静止張力が格子間隔を縮小させ、クロスブリッジの形成確率を上昇させることを報告している。今回、制御タンパク質トロポニン(Tn)の役割に着目した。骨格筋の筋長効果は心筋のそれに比べて小さい。したがって、Tnが筋長効果の制御に関与しているのであれば、内因性のTnを骨格筋型Tn(sTn)に置換することによって筋長効果が減弱すると考えられる。我々は、細胞膜を除去したスキンド心筋のTnを、外来性のTnにほぼ完全に置換することのできる新たな実験系を開発した。標本はブタ心室筋を使用し、これにウサギ腸腰筋由来のTnを組み入れた。これまでに以下の結果を得た:(1)sTnは、Ca感受性を増大させ、筋長効果を減弱させた。(2)タイチンは粘弾性要素としての特性を有するため、筋の伸展後、静止張力は一過的に増大した後に低下する。この性質を利用して、異なる静止張力レベルで活性張力を測定すると、Tnの分子種によらず、筋長効果が静止張力とともに増大した。(3)無機リン酸(Pi)は、クロスブリッジの数を減少させる(Ca感受性の低下)。sTnを組み入れた心筋では、PiのCa感受性低下作用が抑制されていた。すなわち、sTnはクロスブリッジ形成を促進することが示唆された。 以上、筋長効果のトリガー因子は、タイチン依存性の静止張力に基づく格子間隔の縮小であるが、それによって増加するクロスブリッジの数は細いフィラメントの状態に強く依存している。すなわち、細いフィラメントの活性が促進していると、格子間隔の縮小にともなってクロスブリッジになりうる、細いフィラメントから乖離しているミオシン分子の数が減少するため、筋長効果が減弱すると考えられる。
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