真核生物の染色体の両端にはテロメア配列が存在し、その機能は染色体の分解や融合を防ぎゲノムの安定性を維持することである。体細胞では、複製の際にこの末端部分は完全には複製されず、細胞分裂毎に短小化し、ある閾値に達すると細胞は分裂停止に至ることから、テロメアは分裂時計としても重要な機能を担っている。テロメア長は生殖細胞では安定に保たれ、種や系統によって固有の値を持つが、その原因やその生理学的意義は不明である。その中でもC57BL/6Jを始めラボマウスは異常に長いテロメアを有する(〜150kb)。本研究では実験動物として最重要モデルであるラボマウスが、なぜ長いテロメアを獲得したのかを明らかにし、その原因遺伝子を単離することを目的として以下の実験を行った。テロメアの短いKJRと長いC57BL/6JとのそれぞれのF1個体を作出し、その兄妹交配により、さらにF2個体を約150頭作製した。この個体のテロメア長を測定し、マイクロサテライトマーカーの遺伝的多型を用いた連鎖解析によってマウスゲノム上にテロメア長に影響を与える遺伝子座をQuantitative trait loci(QTL)としてマッピングしたところ、第3番染色体と第13番染色体に表現型と連鎖するマイクロサテライトマーカーを認めた。現在、QTL近傍のマイクロサテライトマーカーを増やし、テロメア長とさらに強く連鎖するマイクロサテライトマーカーを検出し、QTL近傍の候補遺伝子の発現量の解析を行うと共に、DNAシーケンスによって変異を検索する予定である。
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