本研究ではテロメア長を規定する遺伝子を探索するために、9系統の野生由来マウスを用いテロメア長を測定した。その結果、野生由来マウスでも多数の系統が長いテロメアを有することが分かった。その中で我々はKJR/Ms(KJR)マウスとCHD/Msマウスが短いテロメアを有することを発見した。両系統で特に短かったKJR/Ms(以下KJR)マウスについてC57BL/6J(以下B6J)マウスとの交配実験を試みた結果、F_1マウスではB6J由来の長いテロメアとKJR由来の短いテロメアを有していたが、KJR由来のテロメアは明らかに伸長していた。このことからKJRマウスの表現系(短いテロメア)は劣性遺伝様式であることが示唆された為、F_1マウスをKJRマウスに戻し交配し、バッククロス個体169匹(♂99匹、♀70匹)を得た。解析した戻し交配個体について表現系を4タイプにグループ分けし、タイピングを行った結果、第13番染色体の47cM付近および第3番染色体の45cM付近ににsignificantを超えるレベルのLRS値が認められた。すなわちこれらの遺伝子座周辺にKJRの短いテロメアを規定する遺伝子の存在が示唆された。テロメア関連候補遺伝子として、第13番染色体にはTert遺伝子が、第3番染色体にはTerc遺伝子が存在していた。両遺伝子の遺伝子配列に違いはなく、これらの遺伝子の発現量や発現時期の差、さらに、これらの遺伝子以外の未知の遺伝子が関与する可能性も示唆された。
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