研究概要 |
1.マウスES細胞におけるトランスポゾンベクターの局所跳躍転移と転移効率の向上。 (1)今回作製したLocal Hopping Enhancer Detection(LHED>ベクターを、まず通常の相同組み替えにてES細胞のPax1遺伝子座近傍にノックインした後、ベクター内のトランスポゾンを転移させたところ、再挿入サイトが同定された135クローンのうち、51クローン(38%)において1.5MB以内の「局所跳躍」が確認された。 (2)トランスポゾンの転移効率を高める方法を開発する目的で、上記ベクター内のtet0配列に対してトランス抑制因子tTRを誘導し、周辺ゲノム領域にヘテロクロマチンを導入した。その結果、同部位への転移酵素誘導が促進され、転移効率が約100倍に向上した。この結果は、Sleeping Beautyトランスポゾンがヘテロクロマチンに親和性を持つという新たな知見を与えるとともに、技術的にも、さらに高効率システムへの道を拓くものであった。 2.CRE/LoxP組替え反応による欠失アリルの作製。 上記1.(1)で得られたES細胞51クローンのうち、トランスポゾン転移先の適切なものを選び、転移前後の位置のLoxP間で、Creを介した欠失導入を行った。この方法で今年度作製した欠失アリルは、欠失の長さが45kbから422kbに及ぶ4種類である。 3.四倍体胚盤胞移植によるマウス胚の作製。 上記1.(1)と2.で作製したES細胞ライブラリの中から、挿入位置や欠失領域の適切なものを計12クローン選び、四倍体胚盤胞移植によって100%ES細胞由来のマウス胚を作製した。マウス胚は胎生11.5日に回収し、現在、全胚LacZ染色とWhole-mount in situ hybridization法により、レポーター遺伝子のパターン変化を解析中である。これまでの結果は、いずれも各クローンにおけるゲノム改変様式を忠実かつ再現性良く反映するものであった。本解析の過程で、既にいくつかの新規シス調節領域を発見するに至っている。 4.ES細胞から神経底細胞へのin vitro分化系を用いたアッセイ。 上記1.(1)で作製したESライブラリの中から、神経管・神経底細胞で発現するNkx2.2とFoxa2,それぞれの遺伝子座近傍へのトランスポゾン挿入クローンを複数同定することができた。
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