研究概要 |
平成18年度は自然発症高血圧ラット(以下SHR)の赤血球変形能をニッケルメッシュ濾過法で評価する際の濾過実験の至適条件を探索することに重点をおいた。具体的には検体である赤血球浮遊液のヘマトクリット値とニッケルメッシュのフィルター孔径を各々変化させて、赤血球サイズが成長とともに変化するラットの赤血球においても感度と特異度を損なうことなく、定量性と再現性をもって変形能が測定される条件を求めた。そして尾動脈での血圧測定と同時に試験的に13週齢のSHRの赤血球変形能の測定を開始した。平成19年度は7週齢と18週齢のSHRにおいても同様に血圧と赤血球変形能の測定を続け、双方の指標の対応を検討することによって一般的な高血圧の発症過程において赤血球変形能が血行動態に及ぼすレオロジー的な影響を検討した。 その結果、血圧が上昇し始める7週齢のみならず、高血圧が維持される13週齢や老化し始める18週齢においても赤血球変形能は低下したままであった。これは昇圧過程での細小動脈の持続的収縮による赤血球への機械的ストレスがその変形能を低下させるのみならず、高血圧維持期に血管リモデリングが生じて赤血球へのshear stressが減じても、酸化ストレスや昇圧に関与する液性因子などが赤血球レオロジーを引き続き障害することが推察された。これらの結果はこの領域での先行研究(Chabanel A, et. al.:Hypertension 10:603-607,1987)の結果と大きく異なり、その原因として赤血球をmassとして扱う本法の優れた定量性と再現性によることが考えられた。
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