研究概要 |
巣状分節状糸球体硬化症(FSGS)は慢性腎不全が進展する過程で広くみられる病態である。我々は、ポシショナルクローニング法を用いてラット13番染色体にあるFSGS感受性遺伝子を同定したが、その遺伝子の働きを修飾する遺伝子がラット第8,9番染色体に存在することを見出した。本研究の目的は、第8番染色体上にある修飾遺伝子を同定することにあった。DNA markerがいずれもBUFホモ型となれば退交配ラットの系にてF2コホートのタンパク尿を増加させるD8Mit5、及び、ACPHを第8番染色体で見出した。両者の間にあるmarkerを約1Mb毎にNCBI data base UniSTS siteで検索しBUF/Mna、WKY/NCrj間で多型があるものをgenomic DNAを鋳型としたPCRで調べた。多型が判明したmarkerを用いたタイピングとEnsembl data baseにて第8番染色体の候補領域を特定した(81.6-86.6Mb)。第8番染色体上の候補領域に30個の遺伝子が存在した。PCR direct sequencing法にて全長coding sequenceをBUF/Mna、WKY/NCrj、SD (IGS)、BNラット間で比較した。膨大な全長cDNA解析でInterphotoreceptor matrix proteoglycan 1 (Impg1)のみBUF/Mnaにてロイシン・プロリン置換を伴う点変異が判明した。合成DNA怯を用いて、Impg1に対する特異抗体を作成した。しかし、この抗体は腎での局在を検出するのに不向きであった。(一方、類似方法で同定した第9番染色体上の修飾遺伝子Lamalは尿細管での特異的発現が確認された。)
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