研究課題
基盤研究(C)
コモンマーモセットは、生理学・解剖学的にヒトに近く、前臨床モデルとして極めて適した小型霊長類の実験動物である。初年度である本年度は、コモンマーモセットにおける体細胞核移植(scnt)クローン胚由来の胚性幹(ES)細胞の樹立に向けて、マーモセット卵子の活性化法、体細胞核移植のタイミング、ドナーに適した細胞種の3点について検討を行った。活性化方法は、電気刺激(150V/mm、50μsec、2回の条件を20分間隔で3セット)と2mM DMAP処置の組合せ、10mM塩化ストロンチウム処置の二通りの方法について検討した。卵子の活性化は、前核形成により確認した。その結果、電気刺激により高率(94.3%)に活性を誘起されるが、塩化ストロンチウム処置では、全く活性化を誘起されないことが明らかとなった。体細胞核移植のタイミングを検討するため、染色体を除去した成熟卵子をレシピエントとし、活性化処置から1時間前、直後および2時間後に、雌の胎子由来繊維芽細胞をドナーとした核移植を行った。これらをISM1培地で48時間、次いで10%FBS添加ISM2培地でマーモセット胎子繊維芽細胞と8日間共培養し、胚盤胞への発生を確認した。その結果、活性化処置前に核移植したクローン胚は、4.3%が胚盤胞へ発生したのに対し、活性化処置後および直後に核移植を実施した場合は、全て8細胞期で発生を停止した。ドナーに適した細胞種を検討するため、雌雄成体骨髄由来細胞および雌成体皮膚由来繊維芽細胞の核移植によりクローン胚を作製し、胚盤胞への発生を確認した。雌および雄の成体骨髄由来細胞の場合はそれぞれ9.4%および14.5%、雌の皮膚由来繊維芽細胞の場合は9.3%が胚盤胞への発生が認められた。これらの結果から、いずれの体細胞をドナーとした場合でも、コモンマーモセット体細胞クローン胚は胚盤胞への発生能を有することが示された。このnt胚盤胞よりES細胞の樹立を試みた。しかしながら、内部細胞塊の分離の方法として定法となっている免疫手術では内部細胞塊を分離できないこと、自然交配卵を用いて樹立したES細胞の培養方法では内部細胞塊の細胞の増殖は認められなかった。今後、ESを樹立するための培養方法を検討する予定である。
すべて 2006
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Stem Cells 24
ページ: 2014-22