減数分裂時における遺伝的組換え現象は、生物の遺伝的様性を高める重要な機構の一つである。しかし、その機構に関しては未だ不明な点が多い。我々は被毛の形態異常を起こす突然変異遺伝子について日本産野生々ウス由来のMSM系統をパートナー系統として連鎖解析を行ったところ、マウス第15染色体末端近傍で組換え率が雄で雌の数十倍高いという大きな雌雄差のあることを見いだした。この雌雄差を引き起こす原因を明らかにすることは、減数分裂時の組換え機構を探る上で重要な手が不りになると考えられる。そこで、このような組換え雌雄差を示す領域がマウスゲノム中に他にも存在するかどうかの検行った。雌に関する連鎖解析の結果、第2、第11、第19染色体末端近傍に極めて組換え頻度が高いと示唆される領域が明らかになったが、その後、より詳細で正確なゲノム情報が明らかになりそれに基づく解析の結果、当初予想したほどのホットスポットは存在しないことが明らかになった。今後、雄に関する連鎖解析も含めてより詳細に検討していきたい。次に、これまでの一連の研究の過程で、このマウス第15染色体末端近傍に雄における高頻度組換え領域の存在が朋らかになった。これは約200KbのDNA領域で4cMの組換え率を示す。マウスでは1cMは物理的距離で1.6から2Mbpに相当するとされており、この領域は通常の30〜40倍の高い頻度で組換えが生じていることが示唆されている。本研究では、このホットスポットを含むBAC DNAのトランスジェシスによりトランスジェニックマウスを作製しBAC DNA挿入部位に組えホットスポットが生じるかを検索することにより、この領域がゲノムの挿入位置や遺伝的背景によらず遺伝的組換えのホットスポットとして機能しうるかどうか、また、組換えの雌雄差にどうのように反映されるかの検証を試みている。
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