研究概要 |
微小循環のゆらぎ 安静時の酸素代謝ゆらぎを調べるため、微小循環を敏感に反映する低b値での拡散強調撮像を用いる方法を確立した。従来も拡散強調撮像を用い微小循環情報の抽出が行われていたが、従来の方法は脳脊髄液の影響を受け不正確であることを明らかにし、新たに脳脊髄液を抑制し低b値を用いる方法を開発した。健常成人ボランティアを対象に新しいこの方法を用いることで、安静時の大脳皮質酸素飽和度(酸素代謝)が25%程度ゆらぐことが示唆された。このゆらぎは安静時背景脳波のゆらぎに対応する。 BOLD信号と神経活動との定量関係 BOLD信号と神経活動との定量関係を調べるために、SDラットの前足に0.3msの電気刺激パルスを4種類の周波数(1, 3, 5, 10Hz)で4秒間加え40秒間隔で3回繰り返し、動物用7TMRI装置でSpin-Echo EPI法によりBOLD信号を測定し、かつ、体性誘発電位(SEP)も測定した。また、電気刺激強度(0.5, 1.0, 2.0mA)も変えて測定を行つた。その結果、各電気刺激パルスに応じて発生するSEPの積分値(P1-N1差の和)とBOLD信号強度は刺激周波数および刺激強度に関わらず、一定の比例関係を示した。SEPの積分値は神経活動により消費されるエネルギーを示している。一方、Spin-Echo BOLD信号は毛細血管およびその近傍からの磁気共鳴信号を反映しているので、組織において供給される酸素量を表していると推測された。また、このBOLD信号変化の機序となる主な緩和現象は、毛細血管内赤血球による動的磁場歪みによるものであり、この磁場歪みは神経活動により消費されるエネルギーを定量的に反映すると解釈できた。
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