研究概要 |
本研究課題では,ひずみ誘導型液体流動を力学刺激として与えることで培養再生骨の石灰化を促進し,同時に光学的にモニタリングされた石灰化度情報により刺激間隔を制御することで石灰化度を最大化できる力学刺激適応型再生骨培養システムの構築を目的とした。平成19年度においては,平成18年度に開発した光センシング機構より得られる情報を利用することで力学刺激間隔フィードバック制御開始時の初期条件の決定することを試みた。なお初期条件としては,石灰化を開始していない状態の骨芽細胞が確実に刺激される力学刺激である必要があり,その探索を行った。石灰化開始前の骨芽細胞の力学刺激への反応を観察する方法として,本研究では,細胞内情報伝達物質であるCa^<2+>をCa^<2+>感受性蛍光色素を用いて観察することに着目した。実験にはラット大腿骨骨髄細胞より分化させた骨芽細胞を用い,それをコラーゲン、スポンジ担体に播種、培養することで再生骨を作製した。細胞内Ca^<2+>の光センシング機構はLEDとフォトダイオード(PD)により構成されており,LEDから再生骨に照射した励起光により骨芽細胞内でCa^<2+>と結合したCa^<2+>感受性蛍光色素が蛍光を発する。この蛍光をPDにより検出し,その強度変化から細胞内Ca^<2+>濃度変化を観察した。同システムにより,再生骨へ与えられた変位(2000μstrain,0.8Hz)により発生するひずみ誘導型液体流動が骨芽細胞内Ca^<2+>濃度の一過性の上昇を引き起こすことが確認された。すなわち,同刺激条件が力学刺激間隔フィードバック制御開始時の初期条件として使用可能であることが示された。この結果は,学刺激適応型再生骨培養システムの構築を大きく前進させるものであり,これにより次のステップであるフィードバック制御プロトコルの効率的な検討、決定が可能となる。
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