研究課題
基盤研究(C)
これまで用いられてきた皮膚角層の剥離法を改良し、特定サイズの硝子板と剥離剤を用いて角層の剥離を試みた。この剥離試料にスピンプローブを37℃の恒温下で導入し余分なプローブを洗浄した後、角層硝子板をESR空洞共振器に挿入し、簡便にESR測定ができるように考案した。この手法を用いて、今回はじめて皮脂を検出することができた。角層脂質の秩序度(構造規則性を示す指標)は、これまで得られたESRスペクトルの超微細結合定数を用い幾何学的に求められていたが、角層脂質内のプローブの環境を顕著に示しているのか、その精度に問題点が指摘されていた。この問題点を解決すべく今回新たにシミュレーション法を導入し、スペクトルの解析精度の向上を試みた。最新のESRシミュレーション解析法を用いて、角層の深さ方向における細胞間脂質の構造状態変移を始めて検討した。改良型の簡便なESR測定を用い得られたESRスペクトルの精査なシミュレーション解析法により、角層細胞間脂質の構造変化を深さ方向で調べた。その結果、シミュレーション法で得られた秩序度は皮膚表面での値は小さく、中層から下層にかけて高い値を取る傾向があることが新たに分かった。すなわち、秩序度が高いということは、角層の中層から下層にかけて細胞間脂質分子が形成するラメラ構造性のよい配向をしていると考えられる。この事実は、電子顕微鏡の観察結果から予測された脂質二重層は外層では構造性が消失し、中層ではよいラメラ構造性をもつと言うこれまでの報告を支持する興味深い結果である。
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Lipids (in press)
J. Invest. Dermatol. (in press)
Spectrochimca. Acta, Part A, Mol. & Biomol. Spectroscopy 63
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