研究課題
基盤研究(C)
培養面がフレキシブルでコラーゲンで覆われたシリコン膜の培養プレートに、正常ヒト肺動脈内皮細胞を播種し、培養面の下から真空ポンプで陰圧を加え、シリコン膜を引っ張り、培養面に播種した細胞に伸展刺激を負荷した。伸展刺激は人工呼吸器を装着した際の肺細胞を模擬するため、従圧式調節換気(PCV)実施時の気道内圧波形にあわせ、周期15回/min、伸展:弛緩比1:2の方形波とした。伸展刺激の強度は伸展率10%(生理的伸展強度)および20%(病理的伸展強度)とし、伸展刺激を加えながらインキュベータ内で培養した。その後、上清中に含まれるサイトカインの量をELISA法で、網羅的遺伝子発現解析を用いて細胞の遺伝子発現を時系列測定した伸展刺激によってIL-8およびMCP-1ともに産生量が増加した。伸展率10%を生理的伸展、20%を病理的伸展と位置づけて実験を行ったが、負荷した伸展率の強度によって、サイトカイン産生量に大きな違いはみられなかった。網羅的遺伝子発現解析によりIL-8、MCP-1の発現量はともに、伸展負荷後早い段階で増加することが明らかになった。また、ELISA法により測定したIL-8、MCP-1産生量とその遺伝子発現の結果からmRNAの転写と翻訳の間には時間的ずれがあることが示唆された。DNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析では、伸展刺激なしの細胞に比べ、刺激負荷の細胞では細胞周期に関連するmRNAの発現が特に増えていることがわかった。パスウエイデータベースを用い発現変化を解析すると、伸展刺激負荷により変化の生じたmRNAはCell Cycle、Calcium signaling pathway、Apoptosis、Regulation of actin cytoskeletonなどのパスウエイに多く含まれることがわかった。これらより、伸展刺激負荷によりDNAになんらかの障害が生じ、それを排除・修復する方向に遺伝子の発現が変化していることが考えられる。
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第21回生体・生理工学シンポジウム論文集
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