研究概要 |
(1)加温目標点(ホットスポット)予測 血管像の重心の相対変位に基づく加温目標点追尾法を拡張した,動き予測法を検討した.加温前に被験者の肝臓の動きを様々な呼吸周期・深度において数分間撮像し,画像セットを得た.ある時点における3つ以上の血管重心から加温目標点を求めると同時に,それら血管の相対位置と最も近い血管分布を有した画像を画像セットから検索し,その後の血管の動きは画像セットにおける当該画像の後の画像における動きと類似すると考えて,1.2秒先までの動きを予測した.3名の健常ボランティアに対して,実験を行なった結果,予測誤差は1-3mmであることがわかった.このことは加温目標点追尾から集束超音波加温装置の焦点位置移動までに時間遅れが存在してもそれを補償しうることを意味し,本研究の成果として重要なものとなった. (2)加温点追尾と温度撮像の切り替え これまで検討・開発してきた「自己参照型温度分布画像化法」,「血管変位に注目した加温点追尾」に加えて上述の「加温点動き予測」の処理を実施するソフトウエアを作製すると共に,加温点追尾と温度計測を交互に行なうための撮像シーケンスをプログラムした.現在引き続き動作試験を行なっている. (3)脂肪組織の温度分布画像化法 メチレン・メチルプロトンの縦ならびに横緩和時間の温度依存性を詳細に検討し,オリーブオイルファントムにおいて縦緩和時間の温度係数が両成分に対して34.0及び73.9[ms/℃],横緩和時間のそれらが23.9及び44.2[ms/℃]のように異なることを見出した.この結果に基づいてシミュレーションを行い,メチレン・メチルの混合信号に基づいて温度を推定すると,メチレンのみを分離検出して温度を推定した場合に較べて,誤差が増大すること,したがって脂肪温度の正確な定量のためには両者を分離しなくてはならないことを見出した.
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