研究概要 |
(1)臓器の面外運動への対応:3次元臓器動に対応するため面外変位を捉える方法を開発した.まずBalanced SSFP法により門脈血管構造の3次元分布を撮像した。血管分岐点付近に着目し,局所組織の圧縮・変形が無視できると仮定した上で,矢状面における分岐点付近の血管断面重心の変位が,組織の左右方向への移動に依るものとして動きを定量した.矢状面内の変位の左右方向の変位への射影には対象血管と矢状面のなす角を使った.本法の有用性を示すため1.5T-MRIを用い,人工血管モデルならびに健常ボランティア実験を行なった.これらの結果,面外運動を定量することができると共に,加温目標位置の3次元追尾が可能であることが示された. (2)血管像と温度分布の交互撮像を行なうシーケンスの開発:血管像変位計測にBalanced SSFP法,温度分布計測にはSPGR法を利用し,両者を交互撮像するシーケンスの開発・実装を目指した.設計ならびに効果の数値シミュレーションは行なえたが,施設のMRI装置とコンパイル環境のバージョン整合の問題が生じ,コンパイル環境の整備が遅れたため実装はまだ完成していない.この点については引き続き完成を目指して研究作業を続ける. (3)脂肪組織の温度分布画像化法:(2)の作業が遅れたため,本研究の派生・応用として先に,乳がん集束超音波治療で問題となる組織変形と脂肪組織温度計測技術を検討した.後者に対してはウシならびにブタ摘出脂肪の脂肪酸成分を11T-NMR分光器により分離検出し,プロトン共鳴周波数,振幅,T_1,T_2の温度依存性を調べた.脂肪酸成分のうち,最も大きなメチレン信号におけるT1及びT2の温度係数が,同じく2番目に大きなメチル信号のそれらと著しく異なる(T_1,T_2共に約半分程度)であることを見出し温度分布定量画像化のためにはメチレン信号の分離抽出が有用であることを示した.
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