研究概要 |
本研究は,リアルタイム観測の可能なミクロエリアへのスポット照射型の超音波照射システムの開発を目的とした。本研究で作成したシステムは,培養細胞などに顕微鏡下の観察野内で超音波をスポット照射し,細胞内の機能性試薬などを活性化することで,超音波による薬物活性化の効果などをリアルタイムで観察することを可能とする。 初年度である平成18年は,リアルタイム観測システム全体を構築し,顕微鏡下で1MHzから10MHzまでの周波数可変照射が可能となり,出力等についても良好な結果を得た。実際に顕微鏡下での超音波強度は,KI法,カロリメトリー法,ハイドロフォン等で測定比較することで算出した。しかしながら,より正確な強度測定法については,今後も検討を行い,生体を対象とした場合の正確な超音波エネルギー吸収量を引き続き求めていく必要がある。 最終年度である平成19年は超音波活性化化合物として,各種の光反応性ケージド化合物を用いて,顕微鏡下での超音波照射による試薬の活性化とさらには培養細胞中での活性化の可能性について検討をおこなった。顕微鏡下での活性化反応については,超音波強度が不足して成功しなかったが,各種の光反応型ケージド化合物において,超音波槽内での活性化には成功した。今後は,集束型の照射プローブの形状の改良と,さらにはバースト波やパルス波を有効に用いるなどの工夫が必要と考えられる。生体試料への影響を調べることを目的として,接着型・浮遊型の培養細胞を用い,超音波照射による細胞内の活性酸素生成の様子をリアルタイム観測することに成功した。また,1MHzから10MHzまでの各周波数の超音波は,診断や治療に広く用いられているため,その安全面の見積りを実施した。強度測定においてやや信頼性は低いものの,本研究を通じて,細胞致死性を指標とした安全性評価の基本を確立した。
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