研究概要 |
本年度は,新たな視覚刺激方法を提案し,その原理を実験的に確認した.実験にあたって必要なシステムの構築が主な課題となった. 提案する疑似ランダム刺激を用いた測定で得られるERPにより,従来法で得られるERPとほぼ同等の応答および成分が検出できることを,実験的に確認した.従来のERP測定における視覚刺激の文字もしくは背景領域を,疑似ランダム系列に基づいて色度変調させた刺激とし,その際に記録された脳波信号と疑似ランダム系列との相互相関関数を算出する.この相互相関関数波形から,従来のERPに出現するP300に相当する成分が検出されるか否かを調査・検討した.その結果,P300の検出は可能であったものの,検出精度を検討するだけの十分なデータを得ることはできなかった.これらを踏まえ,実用的なシステムを実現する上で重要な条件となる測定時間および測定精度の点から,刺激パターンの改善も含めたさらなる検討が必要であると考える. 特に,測定精度の面で,測定時の課題の内容および難易度を変えた場合に,従来のERPに現れる変動と同等の変動が,提案法のERPにも現れるかどうかを確認する必要があるが,この調査は,次年度の課題として残された.さらに,このような提案法を入力装置として実現した場合には,ユーザ(被験者)は長時間にわたって視覚刺激を注視することになる.したがって,目に負担の少ない刺激を選定しなければならないが,そのような安全な視覚刺激条件の調査も,次年度の課題として残された.
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