本研究の目的は、コンピュータシステムへの入力手段として、ユーザの注視点と事象関連電位P300を同時に計測する新たな方法を提案し、入力装置開発のために必要な要件を明らかにすることである. 本年度は、前年度の結果を受けて、視覚刺激パターンの見直しを行い、その原理確認と刺激パターンの最適化を検討した.従来のERP測定における視覚刺激(flash刺激)の周辺部を、疑似ランダム系列に基づいて色度変調させた刺激(PRBS刺激)とすることで、P300と注視点の同時検出を試みた.この刺激の間に記録される脳波信号から、flash刺激に対する加算平均(ERP)を求めることでP300が検出でき、疑似ランダム系列との相互相関関数を算出することで注視点を検出できる.実際の脳コンピュータ入力インタフェースを想定して、9個の視覚刺激を3行3列のマトリクス状に配置した刺激画面を用い、視覚疾患のない健常者2名を対象とした実測を行った.その結果、被験者が注目した1つの視覚刺激に対するERPにP300の出現を確認し、PRBS刺激により被験者の注視点が正しく検出できることを確認した.しかし、PRBS刺激による注視点検出は安定して行えるものの、P300が明瞭に出現しないケースが全体の60%程度あり、改善の必要が示唆された.刺激長、刺激サイズ、変調輝度のバランスを最適に調整が必要と考えられる.実測では、脳波測定部位は2箇所(Oz、Pz)としたが、この最適化については検討の必要がある. 次年度は、刺激パターンおよび測定上の諸条件の最適化を検討するとともに、メニュー選択型の入力インタフェースを製作して、実用上の問題の解決法を検討し、本研究をまとめる予定である.
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