研究概要 |
リンパ管壁における水溶性物質移動に関する研究として,以下の3点について検討を行った. 1.リンパ管内腔からの水溶性物質の外腔へ流出する現象に対するリンパ管内皮細胞の影響について調べるため,摘出したラットリンパ管内腔にTrypsin処理を行い,内皮細胞を除去した条件で12kおよび71kDのFITC-dextranを内腔灌流し,内腔で観察される蛍光輝度の変化から水溶性物質の移動について検討した.その結果,内皮細胞有の条件ではほとんど流出しない12kDのFITC-dextranは内皮細胞を除去すると流出するが,71kDのFITC-dextranは内皮細胞の有無に関わらず流出しなかった.この結果,リンパ管内皮細胞は12kD程度の分子量の水溶性物質に対するバリアとして機能している可能性が示された. 2.リンパ管外腔からリンパ管内腔に対する水溶性物質移動を測定するため,摘出ラットリンパ管を定圧で内腔灌流しつつ,外腔側を一定濃度のFITC-dextranで持続的に灌流し,内腔から流出する灌流液の蛍光輝度を一定時間毎に測定する実験系を構築した.この実験系を用い,12kDおよび71kDのFITC-dextranのリンパ管外腔からリンパ管内腔への移動現象について検討した結果,12kDのFITC-dextranは外腔から内腔に明らかに移動することが確認できた.一方で71kDについてはさらに詳細な検討が必要であることが判明した. 3.リンパ管内腔から外腔に水溶性物質が移動する際に,Rhoキナーゼ阻害薬であるY-27632とTNF-αとの相互作用について予備的な検討を行った.この結果,Y-27632のみでもリンパ管における水溶性物質透過性に影響する可能性が示唆された.
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