リンパ管壁を介して水溶性物質がリンパ管内外を移動する現象はこれまで知られていたが、そのメカニズムや分子量依存性は明らかにされていなかった。今回リンパ管壁を介する水溶性物質の移動において水溶性物質の分子量依存性と、水溶性物質の移動に対するリンパ管内皮細胞の影響を中心として調査および研究を行った。その結果、以下に示す事実が判明した。 (1)リンパ管壁を介してリンパ管内腔より外腔へ水溶性物質が移動する状態を定量的に評価できる実験系を構築し、水溶性物質の移動について調査した。その結果、正常な状態ではおよそ4kDの分子量以下の水溶性物質はリンパ管壁を透過するが、それ以上の分子量の水溶性物質はほとんど透過しない。 (2)リンパ管内腔にTNF-αあるいはY-27632を作用させると、およそ10kDまでの分子量の水溶性物質がリンパ管内腔から外腔へ透過するようになるが、70kD程度の分子量の水溶性物質は透過しない。 (3)培養リンパ管内皮細胞にTNF-αを作用させると内皮細胞内のF-actinの走行に増加が見られ、内皮細胞間隙が増加する傾向が見られた。また、同様にY-27632を作用させるとF-actinが減少したが、細胞間隙の増加は見られなかった。これらの結果と水溶性物質の透過現象の変化を見ると、リンパ管内皮細胞の状態により水溶性物質の透過性が変化し、その要因としてリンパ管内皮細胞の形態が影響している可能性が示唆された。
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