研究課題
基盤研究(C)
強心剤などの心臓血管作動薬投与をコンピュータ制御することにより、急性心筋梗塞時に異常値を呈する血圧や心拍出量などの血行動態指標を自動的に正常化するシステムを開発した。このシステムを発展させ、特異的徐脈薬により心拍数を低下制御することにより、血行動態と心臓酸素代謝を同時に改善するシステムの基盤開発をした。このシステムでは、心拍数低下時の血行動態維持目的に強心剤が増量される。強心剤はカルシウム過負荷などの心筋障害作用も併せ持つ。よってこのようなシステム治療による心筋酸素代謝の改善が、実際に心筋保護的作用を有するか否かについて評価する実験環境を構築した。ウサギ心臓を拍動下に摘出分離し、体外循環に接続、心筋酸素代謝を実時間で計測しつつ、生体内と同じ条件で心臓前負荷・後負荷を広範囲に変化させ制御できる実験環境とした。この実験環境により血行動態制御システムによる治療の心筋保護効果が詳細に検討可能になり、システム開発は大きく促進されるものと期待される。システム治療における心拍数低下手段として、先述した薬理学的手段以外に迷走神経電気刺激法が有用と期待される。この治療法の可能性を、ウサギの心筋虚血再灌流モデルを構築し検討した。心室リモデリングの進行において、心筋組織間質蛋白分解酵素の活性化が重要な役割を果たす。迷走神経刺激は、心筋細胞のムスカリン受容体に作用し、心筋組織間質蛋白分解酵素にたいする内因性阻害物質の遺伝子および蛋白発現を促進し、心筋組織間質蛋白分解酵素活性を低下させることを発見した。この知見により、迷走神経刺激が単なる心拍数制御手段としてのみではなく、直接的心筋保護作用も有する治療法であることが改めて確認された。
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