研究概要 |
インプラント金属は周囲組織細胞の攻撃を受け,耐食性が低下する可能性がある.金属表面と組織の間隙の溶存酸素濃度は細胞の酸素消費によって低下するために細胞非接着部との間で酸素濃淡電池を形成することが金属腐食を促進する主要因ではないかと推察された。また、金属腐食電位の貴化現象が付着微生物の分泌するタンパク質から成るBiofilm形成に起因するとの指摘がある.生体内環境もこれに類似するが,腐食促進そのものが明確に確認されておらず,組織の関与についても報告は無い.そこで、以下の実験的検討を行った. 1)L929線維芽細胞によるBiofilm形成過程で自然分極電位の時間的変化を経時的に測定することで、金属表面に細胞が付着することによる金属・溶液界面のゼータ電位と電気二重層形成に与える影響を検討した。Biofilmが形成された低溶存酸素部で電位の低下が認められた. 2)金属表面の接着細胞Biofilmの成長(高密度化)に伴う金属/スライム間の自然分極電位/電流および金属/スライム間隙の溶存酸素濃度,pH微小電極による経時変化を測定し,接着細胞の金属耐食性への関与を明らかにした。 3)Biofilm(L929を寒天ゲル中に播種した膜)で培養液を2分割するセルを作成し、培地A(大気開放)と培地B(大気遮蔽)の溶存酸素濃度を経時的に測定し、酸素消費速度を測定した.酸素濃淡電池形成を示唆する電位差が確認された.
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