研究課題
人工酸素運搬体であるヘモグロビン内包二分子膜小胞体(HbV)を構成するHbの酸化(met化)を抑制し、生体内で長時間酸素運搬体としての効力が持続する系の開発を目指す。小胞体にHbと共封入させる系として、チロシンを基質としたmetHbのペルオキシゲナーゼ活性を利用した過酸化水素消去系が効果的であることを明らかにした。metHbは過酸化水素と反応してferrylHbラジカルとなり、このferrylHbラジカルがチロシンニ分子と反応してmetHbに戻り、チロシンラジカルはジチロシンとなること明らかにした。また、この過酸化水素消去系をHbV内に組込み、in vitro、in vivo系にてmet化挙動を評価したところ、過酸化水素を連続添加してもmetHbの生成は大幅に抑制された。そこで、チロシン以外に類似の効果を持つ基質群をスクリーニングする系を立上げ、14種類の基質に関してフェリルヘモグロビンラジカルと基質の反応速度の測定し、基質の酸化体の構造とラジカル寿命の測定を行ったところ、トリプトファンなどインドール環とカルボキシル基を持つ誘導体にてチロシンを上回る効果が見出された。更に、一酸化炭素化Hb(HbCO)はmet化が起こらないことを利用して、部分一酸化炭素化Hb(HbCO)からなるHbVのmet化に対する安定性を期待した。部分HbCOのmet化率の推移を測定したところ、CO化率に関わらず残りの酸素化Hbのmet化率の推移はほぼ同じであったので、HbCOからのCOの脱難に伴って緩やかにmet化が起こる系の構築が示唆された。しかし、生体内で予備的にHbCO化したHbVを投与したところ、比較的速やかにHbCOからCOが解離してしまい、生体内ではCOを結合するヘムタンパク質が多く存在し、しかも閉鎖系ではないためにCO解離過程がmet化の律速段階には成り得ないことが明らかとなった。
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ページ: 1508-1517
Artificial Cells, Blood Substitutes, and Biotechnology 35
ページ: 555-567
http://www.takeoka.biomed.sci.waseda.ac.jp/