研究概要 |
コラーゲン結合性の血管新生因子であるHGF融合蛋白質(CBD-HGF)の製造に前年度に成功している。本年度は、その組織工学的あるいは再生医療的応用の可能性について以下の検討結果を得た。 1)血管の再生効果血管擦過モデル(内皮が剥離され、再狭窄の可能性が有る)に対して、CBD-HGFを投与すると、剥離された内皮の再生が促進されることを明らかにした。 2)移植用材料の設計人工血管および心筋パッチ 小口径人工血管の材料である延伸性ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)は,撥水性のため、コラーゲンコートが困難であるが、予め両親媒性ポリマーPAUのコートを施すことで、コラーゲンコートが可能となった。このようにコートされた表面には、架橋剤で、天然型のHGFを共有結合させることができるが、その上での細胞の成育は著しく悪く、活性が失われていた。これに対して、CBD-HGFはコラーゲンへの強い親和性によって材料表面上に、長期的に保持されることを明らかにした。しかもその表面上での内皮細胞の増殖が促進された。また、動物組織を脱細胞化して調製された膜状材料(主成分コラーゲン)への結合性も認められ同じく内皮細胞への増殖活性を確認した。 3)動物実験 以上のように作られた人工血管をイヌ下肢動脈と置換移植したところ、その内面に、早期の内皮化が誘導された。また、膜状素材に関しては、心筋壊死部位へ貼付し、その部位の修復を促す効果が見出された。即ち、これらの材料は増殖活性をもつ移植材料ということができ、今後、心・血管系の再生医療並びに移植用材料への応用が、さらに期待される。なお、血管新生因子と同様に、骨形成因子もコラーゲン結合性に改変することが可能であることも明らかにした。
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