難治性進行肝癌に対しては抗癌剤による化学療法が行われているが、非腫瘍部への肝毒性の問題があり、標準的な治療法は未だ確立されておらず、新しい治療法の開発が急務である。近年、超音波の診断技術の進歩に伴い、侵襲性の少ない超音波の治療応用の試みがなされており、超音波照射によって細胞表面近くで気泡崩壊が起こると、細胞膜に一過性で可逆性の小孔が生じるsonoporation(超音波穿孔)という現象が報告され、さらに現在臨床で使用されている超音波造影剤のマイクロバブルの崩壊によってsonoporationの増強効果が認められることより、マイクロバブルによる新たなdrug delivery systemが期待されている。そこで、超音波照射によるマイクロバブルのsonoporationを用いた、肝癌に対する抗癌剤の新たなdrug delivery systemの開発を目的として研究をはじめた。 平成18年度は、In vivo解析で、ラットに対して、抗癌剤とマイクロバブルの混合液を静脈投与後、超音波照射し、超音波照射部と非照射部における、肝組織内の抗癌剤濃度及ぴTunnel法によるアポトーシスを検討している。今後は肝癌自然発症モデルであるLEC (Long Evans Cinnamon)ラットの担癌ラットを用いて、抗癌剤とマイクロバブルの混合液を静脈投与後、超音波照射し、腫瘍内の抗癌剤濃度及び抗腫瘍効果を検討する予定である。
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