難治性進行肝癌に対しては抗癌剤による化学療法がおこなわれているが、非腫瘍部への肝毒性の問題があり、標準的な治療法は未だ確立されておらず、新しい治療法の開発が急務である。近年、超音波の診断技術の進歩に伴い、侵襲性の少ない超音波の治療応用の試みがなされており、超音波照射によって細胞表面近くで気泡崩壊が起こると、細胞膜に一過性で可逆性の小孔が1生じるsonoporation(超音波穿孔)という現象が報告され、さらに現在臨床で使用されている超音波造影剤のマイクロバブルの崩壊によってsonoporationの増強効果が認められることより、マイクロバブルによる新たなdrug delively systemが期待されている。そこで、超音波照射によるマイクロバブルのsonoporationを用いた、肝癌に対する抗癌剤の新たなdrug delively systemの開発を目的として研究をはじめた。 これまでに、In vitro解析では、培養肝癌細胞株(HuH7等)を用い、培養液中に超音波造影剤(Sonazoid等)と蛍光色素(propidium iodide)を投与し、超音波を1〜10秒照射し、sbnoporationの効率が良くなる至適条件(造影剤濃度や超音波照射条件など)を検討してきた。平成20年度は、In vivo解析として、培養膵癌細胞株皮下移植マウス、膵癌自然発症マウス、diethylnitrosmine(DEN)誘発肝発癌マウス等を用い、超音波造影剤を投与し、各腫瘍におけるsonoporation効果を検討するための、造影超音波による腫瘍血流イメージングの解析をおこなった。
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