研究概要 |
手技の難易度が高い低侵襲治療では,解剖画像に内視鏡やカテーテルなどの治療デバイスの現在位置を重畳表示するといったナビゲーションシステムを併用することにより,安全性の向上が期待される.このようなシステムにおいては,治療デバイスと身体との位置関係を正確に把握することが必要不可欠である.本研究は,MR装置内という高磁場環境下において,治療デバイスの先端位置および姿勢をリアルタイムで測定する位置・姿勢検出システムを開発することを目的としている. これまでに,MRの傾斜磁場を利用した位置/姿勢検出センサについて,互いに直交するループ状の三対のコイルを内視鏡先端への実装に適した形状で配置したプロトタイプを作成し実験を行ったが,結果より,位置,姿勢の推定誤差について,傾斜磁場の絶対値の小さい装置中心付近で特に無視できないことがわかった.これに対する対策を検討すると同時に,内視鏡先端にMRの共鳴周波数に調整した3つの共振コイルを取り付け,その内部に置いた造影剤を強調し,撮像することで内視鏡先端の位置,姿勢を検出することを考えた.共振コイル内部の造影剤からの信号を効率よく取得するため,内視鏡先端部に受信用コイルを置いた.本年度は,共振コイルおよび受信コイルをMR対応型内視鏡先端に取り付け,子ブタの胃腔内に挿入し,撮像実験を行った.受信した信号を画像として取得し,画像処理により,コイルの位置を特定した.他方向から画像を取得することにより,内視鏡先端の位置を一意に決定することができた.また,位置・姿勢検出システムにより得られた情報を用いて,MR内視鏡の術中ナビゲーションを行うための画像情報提示法について,さらに検討した.MR内腔コイルで撮像した胃壁の高精細画像と内視鏡により得られる光学像のフュージョンを行うことで,臓器表面とその深部の情報を同時に提供することが可能となった.
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