【背景】超音波組織トラッキング法(2D tissue tracking法:2DTT)は、断層心エコー画像上の任意の点をパターンマッチング法により自動追尾する方法であり、左室捻れ運動の解析が可能である。収縮性の低下した病的心における安静時とドブタミン(Dob)負荷時の左室捻れ運動の変化については明らかにされていない。【目的】収縮性が著明に低下した拡張型心筋症患者(DCM)での安静時とDob:負荷時の左室捻れ運動について、2DTT法による検討を行う。【方法】DCM患者10例を対象とし、安静時とDob負荷(10μg/kg/min(γ))時に、心基部と心尖部の左室短軸像を一心周期記録した。各々の画像上で心内膜・心外膜面にそれぞれ任意の4点を指定し、2DTT法(HITACHI、EUB-8500)により、一心周期における4点の自動追尾を行った。心内膜・心外膜の各点と4点の中心とのなす角度の変化から、心基部と心尖部の回転角度を求め、その差よりねじれ角度を算出した。【結果】10症例中7例でDob負荷時に収縮性の改善がみられた(収縮末期容量の減少>10%)。これらの症例では、心尖部の心内膜側・心外膜側ともに回転角度の増大がみられた(心内膜側:1.2±1.1→3.6±1.8°、心外膜側:0.8±0.7→2.3±1.2°、p<0.01)が、心基部での回転角度には変化がみられなかった。左室捻れ角度は、心内膜側・心外膜側ともに増大した(心内膜側:3.1→5.7°、心外膜側:2.4→4.6°、p<0.05)。Dob負荷時に収縮性の改善のない3例では、左室捻れ角度の増大はみられなかった。【結語】ドブタミン負荷時に左室収縮機能の改善がみられるDCM患者では、左室捻れ運動が亢進していた。ドブタミン負荷時の左室収縮性の改善には、心尖部の回転運動の改善が寄与していることが示唆された。
|