肩関節機能を超音波画像診断による生体内構造の動態映像と、体表動作が連動した評価手法を検討することを目的に、H18年度、H19年度に検討を行った評価指標を用いて、正常データと病態群との比較を進めた。生体内構造の動態映像の評価指標として、滑動性組織と周囲組織の相対的速度格差を利用した癒着の評価指標や、関節周囲筋群の筋断面積や筋厚などの静的指標、および関節面の滑走性などの動画情報から関節運動制限因子をなどの動的指標などを検討し、あわせて体表動作の観察指標としてシンプルな肩関節内外旋をおこなわせた際の運動可動閾、肩甲骨と上腕骨の運動連関パターンを指標として検討を進めた。 従来からの肩関節の器質的な病態を示す疾患名による分類においては、疾患病態毎の肩関節生体内構造の動態映像と、体表動作に特徴的な評価指標を見いだすまでには至らなかった。また、肩関節生体内構造の動態映像と、体表動作の観察指標との間における運動連関の特徴も明確に分類することはできなかった。このことは、肩関節の病態において、体表動作から肩関節生体内構造の動態を推定評価する之と困難であり、直接的に肩関節生体内構造の評価が重要となることを示唆する。 肩関節生体内構造の動態映像と体表動作の観察指標より、個別症例における機能的病態の経過観察することが可能であったことからも、超音波画像診断等による生体内構造の動態映像と、体表動作が連動した評価手法は、より効果的な運動療法やリハビリテーション手法、および病態発生メカニズムの解明に有用なシステムとなりえると考えられた。
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