in vivo実験:脊髄損傷患者に異所性骨化が多いことに着目し、その病態究明を試みた。ddYマウスに対し、weight drop法および截断法により完全脊髄損傷および不全脊髄損傷モデルマウスを作成した。作成後1週間BBB改変scaleにより麻痺の程度を確認した後、完全損傷群、不全損傷群、対照群(非麻痺)のddYマウスハムストリング筋肉内に豚長管骨から抽出した粗製骨形成因子(BMP)5mgを移植した。3週間後のsoftex撮影において、完全および不全脊髄損傷群の筋内に、正常群に比し明らかに著明な新生骨形成を認めたため、それらの灰分重量(1000℃、1時間焼灼)を測定した。完全麻痺群12.73±5.72mg、不全麻痺群9.45±4.94mg、対照群6.41±1.27mgの新生骨形成があり、対照群に対し完全・不全麻痺群は有意(p<0.01)に多量の新生骨形成を認めた。完全麻痺群と不全麻痺群の間には有意差はなかった。この両群間では、peak out現象の可能性が考えられたので、BMP移植量を3mgで同様の実験を行ったところ、完全麻痺群が不全麻痺群より多量の新生骨形成を認めた。n値が小さいため有意差検定に至っていないが今後の課題である。この実験に加え、病理組織学的観察も同時に行った。麻痺群において、移植後3日から旺盛な炎症細胞(好中球、リンパ球)が出現し始め、成熟筋細胞の脱分化が開始した。5日目には筋管細胞や未熟な間葉系細胞の出現を認めた。7〜14日目には旺盛な内軟骨骨化となり、21日目には明らかな骨形成を認めた。対照群では同様の所見がより小範囲で起こるにとどまっていた。 in vitro実験:脊髄損傷モデルマウスから採取した筋細胞を細切しNogami-system上でBMPを細胞に付加して器官培養を試みた。培養14日目までの組織観察においてはin vivoの所見とは一変し、炎症細胞の浸潤や筋の未分化細胞化は認められなかった。異所性骨化形成には血管系による炎症細胞の供給が必要と考えられた。その他、異所性骨化に対する超音波照射の影響について、研究を進めている。
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