研究概要 |
本研究の目的は臨床において麻痺肢等にしばしば見られる異所性骨化現象の原因究明と予防・治療法に関する知見を得ようとするものである。骨形成因子(以下BMP)をマウスに移植し実験的異所性骨化を作成し、骨化部に超音波を照射することによる影響をin vivoおよびin vitroで確認した。また、脊髄損傷で多発する異所性骨化の動物モデルとして脊髄損傷マウスを作成し、同じくBMPを移植し、異所性骨化への影響を見た。 超音波照射In vivo実験においてBMPをマウスに移植すると、組織像ではリンパ球の遊走、集族が観察でき、その後、周囲の筋組織が逆向性に分化し、軟骨組織へと転換する様子が確認された。この過程においてリンパ球によって筋組織が破壊され、アポトーシスが起こっていると推測されたため、BMPカプセルを移植してから3,5,7日目の組織を、TUNEL染色を行い確認した。その結果、超音波の照射、非照射に関わらず、アポトーシス現象は確認されなかった。in vitro実験では、ラットの胎児の幼若な筋組織にBMPを付加し2週間器官培養することで筋組織が軟骨へ分化した。この2週の間に、照射強度0.1W/cm2、照射率20%の超音波を、毎日10分間照射したが、HE染色、TB染色、type II collagen免疫染色での組織像では、著名な変化は観察されなかった。さらに、同様の条件で培養後、hydroxyproline量を測定したが有意差はなく、glycosaminoglycan量も測定されなかった。 脊髄損傷実験においては、完全・不全にかかわらず脊髄損傷モデルマウスにおいて、対照sham群に比べ有意に旺盛な新生骨形成を認めた(p<0.01)。完全損傷と不全損傷の群間では有意差は認められなかった。これはBMPの負荷量が多大であったため、peak out現象を来していると考えられた。現在、負荷量を減らし、この現象の有無を確認中である。
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