軟骨細胞は継代培養すると急速に脱分化することが知られている.まず軟骨細胞を単層培養した際の型、II型コラーゲンおよびアグリカンmRNAの発現をRT-PCRで調べた.その結果、II型コラーゲンおよびアグリカンmRNAの発現は軟骨細胞採取時がもっとも強く、その後単層培養すると2-3継代目でI型コラーゲンの発現が増加し、II型コラーゲンおよびアグリカンの発現が減少する脱分化が急速に進行することが確認された. 脱分化を抑制すべく軟骨細胞をコラーゲン3次元包埋下に培養した.3次元包埋下に培養しても約1週間でII型コラーゲンおよびアグリカンmRNAの発現は低下した.軟骨細胞は細胞周囲の環境に応じて、その活性を調節している.軟骨細胞の脱分化を抑制すべく周期的機械的刺戟を加え、更に脱分化軟骨細胞の賦活化を試みた.3次元包埋下圧縮ストレスによってI型コラーゲンの発現が減少し、II型コラーゲンおよびアグリカンの発現が増加する軟骨細胞の再分化が促されることが明らかになった. 3次元培養下軟骨細胞を機械的刺戟で再分化するには刺激時間に考慮する必要がある事が示唆され、0分/日、30分/日、60分/日、120分/日の種々の機械的刺激後の反応を調べた.その結果、60分/日の機械的刺戟によってもっとも効率的に軟骨細胞の再分化が促されることが明らかになった. これまでBMP-2、b-FGFは軟骨細胞の再分化作用が報告されている.これらを3次元培養下軟骨細胞に投与すると、軟骨細胞の再分化が促進されることが明らかになった.一方、BMP-2、b-FGFは単層培養に対してもII型コラーゲンおよびアグリカンの発現を増加させることが明らかになった.我々はBMP-2、b-FGFと機械的刺戟の相乗効果を期待して、それらを同時に加えた.しかし、BMP-2、b-FGFと機械的刺戟を同時に加えると軟骨細胞再分化の効果が弱くなる事が明らかになり、軟骨細胞分化の異なった段階で投与すべきと考えられた.
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