研究概要 |
国民のスポーツ離れが進行するなか、高校生がスポーツ活動に取り組むことの重要性については高く認識されている。バスケットボールは高校生のスポーツ活動のなかでも人気の高い種目であるが、スポーツ外傷もたいへん多い。女子バスケットボールでは毎年のように各チームで膝前十字靭帯(ACL)損傷が発生している。ACL損傷の予防プログラムを開発し、実践効果を示すのが今回の研究の目的である。 広島県内9カ所の高校で、合計200名を対象にして1年間にわたって介入研究を行っている。100名がACL損傷予防プログラムを実施したグループで、100名が実施しなかったグループである。ACL損傷予防プログラムは、筋力、バランス、ジャンプの3つの主要項目を含めたエクササイズからなり、10分間で実施できるように構成した。予防プログラム実施グループはこの10分間のエクササイズを毎回のバスケットボールの練習前に行った。開始後1年を経過していない途中経過であるが、その前年のACL損傷発生率は1,000練習時間あたり0.111であった。予防プログラム実施グループでは2名にACL損傷が発生し、発生率は0.038であった。これに対して予防プログラム非実施グループでは4名にACL損傷が発生し、発生率は0.082であった。このように、予防プログラムの実施により、ACL損傷の発生を食い止めることはできなかったが、現時点では予防プログラム実施グループでは、非実施グループより低い発生率に抑えられていた。神経筋機能に関わる検査・測定を行っており、それらの結果とも照らしながら、ACL損傷予防に必要なエクササイズの内容を明らかにするために、研究を継続中である。
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