研究概要 |
目的:平成18年度の研究目的は、インスリン抵抗性有無とインスリン抵抗性の発現に関与する身体活動量、肥満、内臓脂肪量、内蔵脂肪から分泌される生理活性物質の中でインスリン抵抗性の発現に関与するとアデイポネクチンとTNFαとの関連を検討することである。 対象:高トリグリセリド血症を有し、糖尿病の既往がない脳卒中患者33例で、平均年齢は59.5歳、発症からインスリン抵抗性判定までの期間は平均1.4ヶ月であった。この時点で11例では実用的屋内歩行が可能となっていた。 方法:インスリン抵抗性の指標としては、空腹時の血中インスリン濃度と血糖値を「掛け合わせたHOMA-Rと75グラム経口糖負荷試験から得られた糖負荷後2時間での血中インスリン濃度(IRI120)を用い、HOMA-R>1.73、またはIRI120>64μu/mlをインスリン抵抗性ありと判定した。身体活動量の指標としては屋内歩行能力の有無を用いた。肥満の指標にはbody mass index (BMI)を用い、内蔵脂肪は腹部CTを用いて測定した。 結果:インスリン抵抗性は22例(66.7%)に認められた。インスリン抵抗性とその発現に関与する因子との間で関連が認められたのは、BMIと内蔵肥満であった。すなわち、インスリン抵抗性有りと判定された例でのBMIと内蔵脂肪料は、インスリン抵抗性無しと判定された例に比して有意に高い値を示した(BMIではインスリン抵抗性有り:無し=25.8:22.8,P=0.0117,内蔵脂肪量ではインスリン抵抗性有り:無し=102.4cm2:55.6cm2,P=0.0019,統計学的検討は両者ともにMann-Whitney検定を用いた)。 結論:今年度の検討結果からは、脳卒中患者のインスリン抵抗性の発現に関与するのは肥満度であることが示唆された。
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