平成20年度の研究目的は以下の2点である。 1)脳血管障害患者におけるインスリン抵抗性の発現にアディポサイトカインが関与するか否かを検討すること、2)全身持久力訓練がインスリン抵抗性の改善をもたらす背景にアディポサイトカインへの影響があるか否かを検討すること 平成20年度に研究対象となった脳血管障害患者は延べ39例であり、この中で初回のインスリン評価例は11例であった。また平成20年度に3ヶ月の経過期間をもって全身持久力訓練がインスリン抵抗性とアディポサイトカインへの影響を検討可能であったのは5例であった。 脳血管障害患者におけるインスリン抵抗性の発現にアディポサイトカインが関与するか否かに関しては、対象例11例中9例においてインスリン抵抗性が認められた。しかし、インスリン抵抗性の有無とbody mass index(BMI)で評価された肥満度や内臓脂肪面積、アディポサイトカインとの間に有意の差は認められなかった。全身持久力訓練がインスリン抵抗性の改善をもたらす背景にアディポサイトカインへの影響があるか否かに関しては、初回インスリン抵抗性評価時と毎日5000歩/日〜10000歩/日の歩行訓練を3ヶ月施行した時点での比較では、3ヶ月間の歩行訓練によってインスリン抵抗性、アディポサイトカインともに有意の改善は得られなかった。 平成20年度の研究結果からは、脳卒中患者におけるインスリン抵抗性は高率に発現することが明らかにされたが、その発現とアディポサイトカインとの関連は明らかにはされなかった。また、3ヶ月にわたる歩行訓練のインスリン抵抗性やアディポサイトカインの改善に対する効果は認められなかった。
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