研究概要 |
環椎後頭関節屈曲による頭頚部肢位と下位頚椎間屈曲による頭頚部肢位の嚥下に与える影響を明らかにするため,頭部屈曲位と頚部屈曲位における口腔咽頭構造および嚥下動態について,嚥下造影画像を用いて安静時の頚部肢位(中間位)と比較した. [方法]健常成人10名を対象とした.ビデオ撮影した嚥下造影画像をPCに取り込み,画像解析ソフトを用いて計測を行った.比較を行った項目は,頭部角度および頚部角度,口腔咽頭構造を評価する項目として,舌根-咽頭後壁間距離,喉頭蓋谷の広さ,喉頭入口部距離嚥下運動を評価する項目として,食道入口部の最大開大径,舌骨運動距離,時間的要素として,舌根-咽頭後壁接触,舌骨運動,喉頭閉鎖,食道入口部開大の各開始時間と持続時間とした. [結果]現在までに以下のことが明らかになった. 1.頭部角度,頚部角度は頭部屈曲位,頚部屈曲位とも中間位と差があり,各肢位は機能解剖学的に区別しうるものであった. 2.舌根-咽頭後壁間距離は頭部屈曲位にて狭まるが,頚部屈曲位では中間位と差がなかった. 3.喉頭蓋谷は頭部屈曲位で狭まり,頚部屈曲位では中間位と比しやや広がる傾向があったが有意な差はなかった. 4.気道入口部は頭部屈曲位で狭まったが,頚部屈曲位では中間位と差がなかった. 5.嚥下運動への肢位の変化による影響は,頚部屈曲位において舌骨運動のY軸方向への運動距離が延長した.その他は肢位による影響は認めなかった. 6.内視鏡による検討では,頭部屈曲位にて咽頭の狭小化が認められ,頸部屈曲位にて拡大が認められた. [現在の進行状況と今後] 嚥下造影結果および内視鏡検査のデータ分析がほぼ終了した. 嚥下音および嚥下後の嗄声,咽頭残留音を音響分析ソフトにて解析するため,予備的な嚥下音の採取および分析を開始した. 各肢位における口腔内圧の影響を検討するため圧力センサーを用いた計測の準備を開始した.
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