研究概要 |
【目的】拘縮症例の多くに骨格筋の伸張性低下を認めるが,ラット足関節の拘縮モデルを用いた自験例でも不動4週までは関節可動域制限の50%以上が下腿三頭筋の変化に由来していた.つまり,骨格筋は拘縮の責任病巣の中心であり,骨格筋の伸張性低下の要因を探ることは拘縮の発生メカニズムの解明につながると思われる.これまで,骨格筋の伸張性低下には筋内膜コラーゲン線維の配列変化が関与すると報告してきたが,その他にもコラーゲン分子間架橋の形成状態やI・III型コラーゲンの比率の変化なども関与する可能性があり,本年度はこの点を検討した.加えて,拘縮やそれに伴って起こる廃用性筋萎縮に対する運動・物理療法の効果も検討した。【方法】ギプスを用いラット足関節を最大底屈位で1,3週間不動化したヒラメ筋を材料とし,比較対照は週齢を合わせた無処置のラットヒラメ筋とした。筋内コラーゲンを中性塩,酸ペプシンに溶解し,溶解し得ない不溶性コラーゲン濃度を比較した.また,電気泳動法にてI・III型コラーゲンを同定し,その比率を比較した.一方,同モデルのヒラメ筋に伸張刺激や冷・温刺激を負荷し,拘縮と筋線維萎縮に対する効果を特別な治療介入を行わない群と比較した.【結果および考察】不溶性コラーゲン濃度は不動1週では対照と有意差はないが,不動3週では有意な増加を認めた.つまり,不動期間が長期化すると分子間架橋が形成されたコラーゲンが増加し,これは拘縮の進行に関与すると思われた.一方,I型コラーゲンに対するIII型コラーゲンの比率は不動1・3週とも対照より有意に増加していたが,拘縮の進行とは関連が低く,線維化のメカニズムへの関与が推察された.次に,伸張刺激によって拘縮や筋線維萎縮の回復は促進され,運動療法の効果が明らかとなった.また,冷・温刺激ともに筋線維萎縮の進行抑制に効果があり,今後はこれらのメカニズムについても検討する必要がある.
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