【目的】拘縮の臨床症例の多くに骨格筋の伸張性低下を認め、実験動物モデルの結果でも骨格筋は拘縮の責任病巣の中心とされている。つまり、骨格筋の伸張性低下の要因を探ることは拘縮の発生メカニズムの解明につながると思われ、中でも骨格筋の伸張性を司る筋膜の主要構成成分であるコラーゲンの変化が重要と考えられる。昨年の結果では、拘縮発生時には骨格筋内コラーゲンに分子間架橋形成やIII型コラーゲンの増加が認められたが、拘縮の進行との関連性は明らかにできていなかった。そこで、本年度は不動期間の長期化に伴う拘縮の進行と骨格筋内コラーゲンの変化との関連性を検討した。 【方法】ギプスを用いラット足関節を最大底屈位で1、2、3、4、8週間不動化したヒラメ筋を材料とし、比較対照は週齢を合わせた無処置のラットヒラメ筋とした、検索はヒラメ筋に含有する総コラーゲン量とペプシンによっても溶解されない不溶性コラーゲン量、電気泳動法ならびに試料の凍結横断切片の免疫組織化学染色によって同定したI・III型コラーゲンとし、拘縮の程度は足関節背屈可動域で評価した。 【結果】足関節背屈可動域は不動期間が長期におよぶほど減少したが、総コラーゲン量とIII型コラーゲンは不動後早期より増加を認めた。しかし、不溶性コラーゲン量は不動後3週で増加し、4、8週でも同様に増加していた。 【考察】以上の結果から、骨格筋の不動はIII型コラーゲンを主体としたコラーゲン含有量の増加を招くものの、この変化は拘縮の進行とは関連性が低いことが明らかとなった。つまり。不動後早期から認められるコラーゲン含有量の増加は線維化の発生を意味し、その本態はIII型コラーゲンの増加ではないかと推察される。一方、不溶性コラーゲン量は拘縮が顕著となる不動1ヶ月前後から認められることから、分子間架橋結合の形成が拘縮の進行に関連している可能性が示唆された。
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