これまで、骨格筋由来の拘縮の発生メカニズムに筋内膜を構成するコラーゲン線維の可動性減少が関与していることを明らかにしてきたが、本研究ではこの点をパラメータとし、超音波(US)治療による拘縮の進行抑制効果を検証した。 予備実験として、ラットヒラメ筋にUS照射(条件:1MHz、1W/cm^2)ならびにその疑似照射を15分間行い、筋内温度の変化を調べた。その結果、US照射前34.3℃であった筋内温度は、照射7分後には40.6℃に達し、照射終了まで約40℃を保っていた。なお、疑似照射による筋内温度の変化は認められなかった。次に、ギプスを用いラット足関節を最大底屈位で4週間不動化する過程で、上記の条件で1日15分間(週5回)、ヒラメ筋にUS照射を行うUS群と同頻度で疑似照射を行うSham群、不動のみの不動群、ならびに無処置の対照群を設定した。実験終了後、拘縮の程度を足関節背屈可動域で評価した結果、US群は対照群より有意に低値であったが、Sham群や不動群よりも有意に高値を示した。また、ヒラメ筋の筋内膜におけるコラーゲン線維配列を走査電子顕微鏡で観察した結果、US群は対照群と類似し、筋線維の長軸方向に対して縦走していたが、疑似照射群や不動群は横走していた。 以上の結果から、US治療は不動によって惹起される筋内膜のコラーゲン線維の可動性減少を抑制し、このことが拘縮の進行抑制にっながったのではないかと推察された。ただ、今回の条件のUS照射では温熱効果の影響も含まれており、今後はUS特有の機械的振動のみの効果についても検証する必要がある。
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