研究概要 |
【背景】褥瘡とは,主に体重支持面から体接触面に加わる応力や摩擦などから生じる局所的な皮膚および皮下組織損傷である.早期発見された創の浅い褥瘡は1-2ヶ月で治癒することが分っていることから,本研究では,生体電気インピーダンス解析(Bioelectrical Impedance Analysis : BIA)法を用いた褥瘡組織の早期発見法の確立を目的とした.すなわち,褥瘡初期段階である発赤は毛細血管拡張・充血,浮腫により組織水分量が増加した状態と考えられる.体液は誘電性であることから,初期褥瘡組織においては電気インピーダンスの低下が予測できる.このことから,BIA法にて,正常皮膚と発赤部位を,電気インピーダンス値の差として検出可能と考えた.【実験方法】左前腕内側皮膚に対しアルコールパッチテスト(Ethanol patch test :以下EPT)によりskin ruborを作成し,二電極法及び四電極法によりnormal skinとskin ruborの生体電気インピーダンス計測を行った.計測はDigital lock in amplifier(エヌエフ回路設計ブロック社製,LI5640)にて行った.電極には心電図用ディスポーザブル電極(日本光電社製,P150,φ=5mm)を用いた,電気インピーダンス計測に際しての周波数帯域は0.1Hz〜10kHzとした.計測対象は,EPT Reaction positive被験者4名とnegative被験者1名とした.計測は急激な体液変動の影響を除くため,20分の安静座位姿勢保持後に行うとともに,室温下で行った.【実験結果】二電極BIA法により,全EPTR positive被験者においてskin rubor組織の間質液抵抗値がnormal skinと比較し約11.4±3.1%減少することを確認した.一方,EPTR negative被験者においてはこの値の減少はほとんど見られなかった.【考察】褥瘡組織における組織水分量増加をBIA計測により検出可能であった.また,四電極BIA計測を行ったところ,深部組織のインピーダンス計測の可能性が示唆され,より進行した褥瘡組織の評価が可能となると考えられた.
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