研究概要 |
本研究では,褥瘡が発生・進行する皮膚・皮下組織そのものを工学的に評価することを目指した.すなわち,皮下構造(組織・血管)を生体電気インピーダンス法(以下BIA法)を用いて電気的に計測し,皮下血流や組織状態の定量評価を行うものである.昨年度は,従来より検討を行ってきた二種類のBIA計測方法(交流電流計測方式ならびにパルス電流計測方式)につき,モデル化を行うとともに,生体内部での電流分布などを考察した.モデル化に際しては,CPE(Constant Phase Element)要素を考えることで,より実際の生体実験データを反映したモデルが実現できることが示されたが,CPE要素はあくまで計測データをカーブフィットさせるための数学的便宜要素であり,何らかの生体の特性を反映したものではないことに留意する必要がある.また,皮下深部を流れる電流について考察を行うことで,深部褥瘡(炎症組織)の検出の可能性に関して検討した.その結果,4電極法によるBIA計測では,皮膚表面の影響が及ばないことがわかり深部組織の電気的評価の可能性が示された.このことは生理食塩水を用いたin vitroモデルでも確かめられている.臨床での利用が可能なBIA計測デバイスの設計に関する検討としては,矩形波電流によるBIA計測が計測時間や計測装置の観点から有効であると考えられた.また,昨年度までの健常者による生体計測実験,すなわち,アルコールパッチテストによる模擬褥瘡組織作成並びに電気インピーダンス計測実験を踏まえて,動物実験として,ウサギ耳垂を対象としたモデル計測実験を行った.
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