研究課題
基盤研究(C)
本研究は、屋内外での利用を想定した聴覚障害者のための音情報を伝達するシステムを開発することを目的とし、以下のように研究を実施した。1)聴覚障害者に伝達する必要のある音情報を定義した。屋外では、危険な状況を回避するため、情報を短時間で伝達する必要があるので、音種情報よりも音源の方向情報の方が重要となる。これは、本研究で対象とする聴覚障害者は視覚により対象音源を認識できることを前提としているからである。このため、音の発生の注意情報と音源の方向情報の2種の情報とした。屋内では、聴覚障害者の生活向上を重視することとし、注意情報、音源の方向情報および音種情報の3種の情報を必要な音情報とした。2)マイクにより収音した音を分析し音源の方向と音種を検知する手法を提案した。音源の方向は前後左右4種類、音種は屋外4種類、屋内7種類とした。音源方向の検知には、2つのマイクで録音した音の振幅値の積算値比を用いた。実験結果より、前後2方向の認識率は平均94.6%であった。音種の検知には、6種類の特徴パラメータを用いて多次元空間のユークリッド距離により音種を検知することとした。10音種の検知(その他の音を除く)で認識率は80%となった。3)刺激パターン波形(計10種類)に単語(3種の情報)を割り当てた。刺激パターン波形の設計には、各単語が各パターン波形に関連付けられるように、周波数、仮現運動の方向性、刺激回数を考慮した。10種のパターン波形を第一刺激(注意情報)、第二刺激(音源の方向情報)および第三刺激(音種情報)に用いて、これらの刺激パターン系列によって必要な音情報を伝達する手法を提案した。4名の健常者を対象として各自4回の方向情報および音種情報翻訳テストの実験を行った。各テストの4回目には、屋外と屋内でそれぞれ平均正答率が約95%、約92%、平均反応時間が約1.2秒、約1.6秒の値が得られた。
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9^<th> Western Pacific Acoustic Conference, WESPAC IX 2006
日本音響学会聴覚研究会資料 36・7
ページ: 671-676