研究概要 |
平成18年度は,姿勢動揺の様子やバランスの不安定な状態について振動触覚刺激を用いて注意喚起し姿勢を修正する方法を教えるシステムを試作し,高齢者や障害者に適用してバランストレーニングを行い定量的な測定を行うための以下のような研究活動を行った. (1)被験者の姿勢変化を客観的に測定する方法として,身体各部の三次元計測と床反力計測を同時に行う手段を開発するために,上肢・体幹・下肢の各部の変位を計測する身体動作解析装置を導入した. (2)振動刺激によって被験者に姿勢変化を惹起させ,バランストレーニングを行うために,専用のソフトウエアを開発した.例えば,姿勢動揺の大きさが一定の範囲を超えた場合に振動触覚刺激を提示するなどの方法を実現している. (3)バランストレーニング時の能動的な運動の様態を被験者に教示するために,複数の振動子を身体各部に装着し,振動刺激を経時的に切替えて表現する方法を開発した.振動触覚刺激の与え方を適宜調整することで,被験者はバランストレーニングを容易に行えるようになる. 以上の準備を踏まえて,次の項目について調査研究を始めている. (a)姿勢動揺に関して情報提示する内容の明確化:バランストレーニングを効果的に行うためには,どのような情報を本人に提示するのが本質的であるかを実験的に明らかにする. (b)大きな姿勢変化を伴う際の姿勢の安定性の評価:床反力測定を通じた重心位置データは起立時しか測定できないが,上体の傾斜角度などの三次元位置情報は歩行時でも測定可能である.両者を比較することで,歩行時など姿勢動揺が大きい場合の姿勢の安定性を評価する手段を検討する. (c)振動触覚による情報の表現方法の可能性の追求:姿勢動揺の状態をどのように表現すると理解しやすいか,姿勢を安定化させる手がかりとしてはどのような振動触覚が適当か等の実用性を踏まえた技術的な検討を行う.
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