本研究の目的は、フェールセーフとフォールトトレランスの考え方をベースに、ユーザの操作の中断及び動作の停止が許容困難な介助・支援機器において、ユーザの利便性を考慮した安全技術を確立するものである。研究対象は、障害者・患者・要介護高齢者の自立支援・介護支援を行う現場における、移乗・移動用のリフタ・電動車椅子、食事・入浴・排泄等の介助・支援機器が故障した際の機能維持のための基礎技術である。具体的には、介助・支援機器のセンサ・アクチュエータ・ソフトウエア・電気ハード・機構の各要素のいずれかに故障が発生した場合において、故障箇所の検出や故障状態の評価、および前記評価結果をもとにした動作出力制限およびユーザへの情報提示とヒューマンエラー防止の機能開発を目標とする。 平成20年度は、ユーザへの情報提示とヒューマンエラー防止機能の開発を継続した。機器故障時に安全機能による停止状態を解除し手動操作することを想定し、前年度準備したリニアスライダシステムで実験した。エラー発生の原因として、不注意と意識低下があり、操作の初期では不注意が操作に慣れた後では意識低下が生じやすい。指定した位置区間への移動と停止を繰り返す課題を被験者に与え、どの程度停止区間を超過するエラーを発生するかをさらに調べた。時間経過に応じ停止区間に対する警告を漸次ランダムに与えるアルゴリズムにおいて、慣れの生じる時間と意識低下の生じる時間を実際に計測し、ランダム化のパラメータとして設定するが、慣れの生じる時間と意識低下の生じる時間をさらに多くの被験者で計測したところ、個人差が大きく数種のパターンに分類できることがわかった。個人差に対応できるようアルゴリズムを改良した。
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